「家に帰りたい。」
山ほど聞いた、この言葉。
みんな、家ほど良いところは無いのではないでしょうか。
入院患者さん、施設の入居者さん、様々な人が様々な立場で「家に帰りたい」と私に訴えかけてきました。
でも、なかなか家には帰れません。
しかしそんな中、太腿の骨を折った状態で、家で寝て過ごす方の訪問リハビリを担当したことがありました。
さすがに骨折と言われれば、どんな対応をすべきなのか分からず、主治医に直接コンタクトを取ったのは、いい経験になりました。
大腿骨骨頭にひび?
O様 75歳 女性
大腿骨(太ももの骨)には、骨頭と言って、骨盤にハマるボールのような部分があります。
それが股関節(足の付け根)になるのですが、そのボールの部分にヒビが入った状態の方でした。
転倒による骨折です。
初対面では当然、「寝たきり」の状態でした。
担当のケアマネさんからは、主治医から「歩いてもいい」と言われています。とのこと。
どんな感じなのでしょうか?大腿骨の骨折ですよね?
患者様、寝たきりですよね?歩いて良いってどういう事ですか?
と、なったわけです。
主治医のいる病院に電話
訪問リハビリをしていると、困ることにレントゲン写真を簡単に見ることができません。
稀に患者様自身がレントゲンを持ってらっしゃる場合もありますが、今回はありませんでした。
骨頭骨折、と言われても、どの部分がどのようにヒビが入っているのか、どうしても確認してリハビリに入りたいと思い病院にアポを取って行ってみました。
あんたたちが見て意味あるの?
と、お医者様にぼやきを入れられながら、レントゲン写真を見せてもらいました。
そこの病院は、電子カルテで、画面上にレントゲン写真が映し出されました。
O様の骨折は、本当にちょっとだけピリっとヒビが入っているような状態でした。
ちょっと動いたくらいでは骨は転移しないような状態でしたので、安心しました。
意味あるか無いかで言えば、「ある!」とお医者様に言いたいところでした。
この後、安心してリハビリに取り組めたのは言うまでもありません。
座る事から始めましょう!
寝たきりの状態でスタートしましたから、まずはしっかりと座れることから始めました。
「あたたたた…」
痛みはありましたが、動いても問題ないということでしたから、痛みは許容範囲ということで、痛みのある状態でも座りました。
訪問リハビリの回を追うごとに痛みは取れていきました。
次は立ち上がってみましょう!
O様の場合は、骨折していない方の脚だけで、ほぼ立っていられる状態でしたので、少しずつ体重を骨折側の足にかけるという感じでリハビリを進めていきました。
そして、体重をかけられるようになってくると、次はその場足踏み訓練に進みます。
この頃になると、体はだいぶ楽になり、気持ちも前向きになってこられました。
そこでこの質問。
「体が良くなったら、何がしたいですか?」
するとO様、
「買い物に行きたい。」
との事で、「買い物にタクシーで行ける」という目標を立ててリハビリを進めていきました。
外歩きが300mほどできたら実際に買い物に行ってみましょう
目標がハッキリすると、人の行動は力強さを増します。
そして、グングンと良くなるものです。
ひとりで外歩きを練習するのはまだ待ってくださいね。
転んだら大変ですから。
と言って、制限をかけながら、家の中とリハビリでは外歩きを練習していきました。
およそ2ヶ月で寝たきりの状態から、買い物に行けるくらいまで回復しました。
いざ、買い物へ
杖をつきながらですが、外を300mほど歩けるようになり、リハビリの一環として車に乗って買い物に出かけました。
買い物に患者様と一緒に行く経験が、これまで無かったので分からなかったのですが、買い物中はカートを押して歩くと、カートが歩くのを補助してくれる。
O様もカートを押しながらスイスイと買い物に行かれました。
およそ30分。
楽しく買い物をされ、「買いすぎないように注意」という事くらいで、問題なく買い物できました。
買いすぎると持って帰るのが大変ですから。
まとめ
大腿骨骨頭骨折の患者様の在宅治療から買い物デビューまでのリハビリを記事にしてみました。
今回の症例は、珍しい症例ではありましたが、医師が「歩いても良い」というくらい、軽傷でしたから経過が良かったのだろうと思います。
寝たきりから座る→立つ→歩くがスムーズ進みました。
これは、寝たきり期間が短かったから復活も早いわけです。
リハビリのスタートは、早ければ早いほど結果が良くなります。
また、買い物に行きたい。
という具体的でかつ身近な目標も良かったなと思います。
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